「どうしてごまかす。どうしてうそをつく?はっきりしろよ!」
えっ…。
楠木さんは、私の両肩を押さえつける。
私の背中は壁にぴったりとくっついていて、もう後ろにさがることはできない。
「どうしてごまかす!自分の気持ちにどうしてうそを吐くんだよ!」
楠木さんの睨み上げる目からは、いつのまにか大粒の涙が光っていた。
「なんで…なんでよ!!なんで!答えな!!」
ポロポロと頬をつたう涙。
楠木さんは髪を振り乱しながら私の肩を揺すって問い正す。
自分の気持ちにうそを吐く?
「私は藤井先輩の事が好きだ、アンタもそうなんだろ!?」
楠木さん…!!
楠木さんは気づいてたんだ。私の気持ちに。
だから、私が自分の気持ちに嘘をついて、答えたことに怒ってるんだ。
「アンタも好きなんだろ?なぁ!?」
涙でぐしゃぐしゃな顔をして必死にそう問う、楠木さんに、私は目を閉じて頷いた。

