あのときは、藤井先輩に名前を呼ばれるたびに、胸がドキドキしてしまって。
あれ以上名前を呼ばれたら…私多分ドキドキしすぎてパニック起こしてしまうところだったし。
でも…先輩の事が好きだから、名前を呼ばれることにときめいてしまったって…楠木さんに言ったら私、殺されるかも!
「えっと…」
どうしよう。
「早く答えて」
えっと…うーん。
なんて答えれば、無難かな…。
あっ…そうだ!
「聞き間違いですよ。そんなひどい事言ってませんよ」
よし。我ながらいい感じに答えられたかも。
聞き間違いってことにしておけば大丈夫。
私は笑顔で楠木さんのほうを見た。
…笑ってない。
そして、楠木さんは右手を高く振り上げると私の左ほほを勢いよく叩いた。
≪パシーンッ≫
ど、どうして。
ひりひりと痛む左ほほをおさえる。
「いい加減にしろ」
楠木さんの声とは思えない低さの声が聞こえた。

