藤井先輩と私。

 
「は、はい」

私は、おそるおそる立ちあがる。

けど、楠木さんの顔を見るのが怖くて顔はコンクリートを見つめたまま。


「顔上げろや」


「は、はい」



目の前には、髪の毛をメドゥーサの如くうねらせている、ヤンキーオーラ全開の楠木さんが立っていた。


腕を組んでこちらを睨みつけてるんですけど…怖すぎるんですけど!!


私、楠木さんをここまで怒らせるようなことしたっけ。

いつ?どこで?


思い出せない。




「私は今怒ってる」




えぇ、分かりますとも。



「どうしてか分かるか?」



分かりません。


私は首を横にブンブンと振った。




「アンタ昨日の放課後、藤井先輩を傷つけたからじゃ!」




昨日の放課後……あっ。

でも、あの教室には私と先輩しかいなかったはずなのに、どうして知ってるんだろう。


「昨日の放課後、偶然アンタの教室を通りかかったときに、会話が聞こえたんだよ」


楠木さんは、目に一層力をこめて私を睨む。




「なんであんな事言ったんだ?あぁん?」


「えっと…その…」