「結局俺の気持ちは伝わって無くて、勘違いで終わった恋だったけどさ、俺は別に後悔はしてないよ。想いを伝えた事」
でも…。
「それに高校入って橋宮にまた会えた事とても嬉しかったし…」
笑ってそう言う梶瀬君は、本当にすごい人だと思う。
「橋宮は…そのジュディって子が藤井の名前を呼び捨てにしたことで気持ちが混乱してるって言ってたけど…」
「うん」
「俺…正直に言うと、藤井が橋宮の名前を『陽依』って呼んでたことすごく腹が立ったよ」
え?なんで?
「名前ってさ、苗字より下の名前で呼ばれる方が…距離が近く感じるだろ?だから藤井が、普通に橋宮の事そう呼んでるのがなんか羨ましくてさ」
あっ…梶瀬君の言ってる事なんだか分かるかも。
「やきもち焼いてた。俺、藤井に嫉妬してたよ」
や き も ち
「俺の方が多分藤井より長く橋宮と接してたのに、その時間をスキップして飛び越えられた気がして、胸が苦しくなった」
梶瀬君はそこまで話すと、「あ、もう空が暗いや。早く家帰らなきゃな」と言って私の家の方向へ足を進めた。
「えっ、ちょっと続きは?」
私がそう聞くと、
「え?もうおしまいだよ。俺が話すのはここまで」
「そんな…もう少し…」
「ほら、もう暗いし急ぐぞ」
「えぇ~」
それから駆け足で私の玄関まで辿り着いた。
競歩って意外と体力を使うもんで、家に着いた頃ははぁはぁと息が乱れていた。

