私は何度も目を擦る。



「橋宮、俺は本物」



「うそ!」



梶瀬くんは、私に近寄ると私の目線に顔を合わせてニコッと笑った。


「なんで?」


「なんでって?」


「なんでここにいるの?」


「うーん…本原ユカ様の差し金かな?」



梶瀬くんは意味が分からないことを言う。


「ユカの差し金?」


「そ、本原ユカ様が俺に直々に司令を出されたんだよ」



「もう!冗談やめてよ」


梶瀬くんはずっとニコニコして言うから、私はいまいち状況が飲み込めない。


それに、梶瀬くんはどうして普通に笑ってるんだろう。

この前の遊園地でのこととかもう忘れちゃったのかな。




「どうした?急に黙り込んで」


「ううん!なんでもない」


梶瀬君は、夕陽の方を向くと、少し小さな声で



「橋宮が気にしなくてもいいよ。俺はもう大丈夫だからさ」


と言うから、私は驚いた。


梶瀬君には私の心の中全部見えてしまっているのかな。



「だから、俺、橋宮と友達になりたいんだけどいい?」


「うん!友達!」


私が思いっきり大きな声でそう答えると、梶瀬君はハハッと笑って、「それでいいよ」とつぶやいた。