藤井先輩と私。

それから私は、気持ちが分からないまま一日を過ごした。

言葉にしようとするけれど、頭の中にモヤモヤっとしたものがあるだけで、それをどうにも例える事ができない。


なぜか今日はジュディが欠席で、それが唯一の救いだったけれど。


頭を抱えて悩む私を委員長が心配してくれたけれど、すぐに


「陽依を甘やかしちゃだめよ。貴光」

とユカに遠ざけられてしまった。


う~ん。

考えれば考えるほど、深みにはまって入ってる気がする。


この気持ちに答えなんて本当にあるのかな。



はぁ……と、ため息を吐いて、自分の椅子から立ち上がると、放課後になっていることに気付いた。


教室には私しかいない。

机をよく見ると、≪先に帰るね≫というユカの落書きがあった。


窓の外は綺麗な夕焼け。

いったいどのくらい時間を忘れて考え込んでいたんだろう。



とりあえず…帰らなきゃ。



そう思い立った瞬間、後方でガラガラっと教室の扉が開く音が聞こえた。




だれか忘れ物でも取りに来たのかな。



私はそれに構わず鞄に教科書を詰めて行く。


「忘れ物なしっと…」



さっき教室に入ってきた子はもう行ってしまったのかな。

物音一つしないし、きっと帰ったんだろう。

あいさつぐらいすればよかった。


よし、帰ろう。


私は、鞄を肩にかけると、後方の扉の方を振り返った。







「え………」