藤井先輩と私。

  

宿題は、あれから死ぬ気でがんばって、昨日というか今日の午前3時に終わった。

「これでよし!」


って、一息ついてる暇もないんだった。


私は鏡の前でもう一度髪形を整えると、鞄を持って外へ飛び出した。


「いってきまーす」


「いってらっしゃい!」



お母さんの声を聞きながら、足早に学校へと向かう。


けれど、徐々に私の足取りは重くなっていった。


そっと人差し指を唇にあてる。


まだ藤井先輩の唇の感触が残ってるみたいに、触れるだけで頬が熱くなっていくのがわかった。


でもすぐに、頭の中にジュディの顔が浮かんで、胸が締め付けられる。


「藤井先輩……」


学校では、なかなか会う機会はないけど、もしも会ったらどうすればいいの?


とぼとぼ歩いていると、いつのまにか学校の校門前。


「ゆっくりあるいたのに…まだ余裕が…」


しかたない、先輩に会いませんようにと祈りながら私は校門をくぐった。


幸いなことに先輩には会わずに教室に入ることができた私は、机のうえにつっぷした。

まだ学校始まったばかりなのに、どうしてこんなに疲れてるんだろう。


「はぁ……」


「ため息吐くと、幸せ逃げちゃうぞ」


聞きなれた声に顔を上げる。


「ユカ…」


「泣きそうな顔してどしたの?陽依らしくない」


私が泣きそうな顔してるの、誰のせいだと思ってんのよ。

元はと言えば、ユカがあんなヒント私に言うから。



でも…その相談をしたのは私だから、ユカ一人を責められないな。



「藤井先輩と何かあった?」



「…えっ」


「陽依の顔バレバレ、あのヒントのおまじないやってみたの?もしかして」