藤井side―




走っていく陽依の後ろ姿を俺は茫然とみつめていた。


……なにがおこったんや…



頭の中がごちゃごちゃ…いや、まっ白で何も考えられへん。

今この状況が、理解不能。



よし、まずは頭の中整理せな。



『藤井先輩っ』


陽依が俺の名前を呼んで…


俺は振り向いた。



夕焼けに照らされた陽依の姿。


一歩二歩と近づくと、陽依が目を閉じてこちらを向いている。



夕陽のせいかも知らんけど、頬が赤くて、いつも以上に陽依が可愛く見えた。



なんで…目ぇ閉じてんねん!


ってまさか、これってアレか?アレなんか?

もしかして陽依も俺のこと…その…えっと…す…す…


いや、言えへん。


そしてこれは、き…き…きすっちゅーやつか…。



俺…、俺でいいんか?陽依…。



俺はそっと、陽依の顔に近づく。

艶やかな唇に誘われるように、俺は優しく触れるだけのキスを落とした。










…そ、そや。

それで、いきなり陽依が俺を突き飛ばして、走って帰ってしもたんやった。