その公式を代入していくと、意外にあっさりと問題が解けた。
「先輩!すごいです!」
「しっ!陽依!ここ図書館やで!」
あっ…しまった。
周りを見渡すと、勉強や読書をしていた人たちがギロッと私達を睨んでいる。
「せ、先輩こそ声大きいですよ」
「そおやな」
先輩は周りの人々に頭を下げると、小さな声で他の問題の解き方を教えてくれた。
先輩って数学得意なんだぁ。
ますます尊敬。
じっと先輩を見つめる。
一生懸命私に数学を教えてくれる先輩。
「このⅩちゅーヤツが厄介なんやって…聞いてるか?陽依」
「あっはい!」
「なんやぼーっとして」
先輩が一生懸命教えてくれてるのに、私なんて失礼なことを。
「すいません。つい先輩に見とれてしまってました」
「なっ…」
先輩はがばっと、体ごと後ろを向いた。
どうしたんだろう。
「先輩?」
「なんや?」
「どうしてそっち向いてるんですか?」
「なんとなくや、ほら次の問題解き」
先輩は手だけをこちらでひらひらと振ると、そっぽを向いたまま黙ってしまった。
変な先輩。
それから一時経って、先輩はやっとこっちを向いてくれて、数学の続きを教えてくれた。