「ごめん。すごいケガさせちゃったね。病院…」
と言いかけて、口を閉ざす。
ここで一番近い病院と言ったら、母さんがいる病院だけ。
俺自身そこから逃げるように走ってきたのに、また戻るなんて…。
でも、この子のケガが心配だし…。
といろいろ考えていると、
「ちがうの!…これ、公園で一輪車してたらこけたの」
と訂正して、
「びょういん怖いからだいじょぶ」
と伏し目がちに行って見せた。
この申しではありがたい。
不謹慎だけれども、ほっとした。
「そっか、びょういんこわいもんね。僕もキライ」
でも、その傷はほっとけない。
なにかなかったかなぁとポケットに手を突っ込んでみると、母さんからもらった絆創膏が出てきた。
「あぁ、そうだ!これ貼る?」
絆創膏は母さんがいつも持たせてくれていた。
「僕もよくこけるから、ママが……持たせるんだ」
“ほら、絆創膏持った?”
“えーいらないよー”
“ダーメ、悠太はよくケンカするんだから、絆創膏持ってなさい”
“はーい”
そんな会話を思い出して、なんだか目頭が熱くなる。
でも、女の子のまえでは泣けない。
幼いながらもそんなプライドはあって、ぐっと涙をこらえた。