藤井先輩と私。

 


私は口に含んだアイスの棒をゴミ箱に捨てると、二階にあがって、図書館へ行く準備を始めた。



鞄に、宿題の詰まったファイルと筆箱、なにかと役に立つ電子辞書を詰めて、ジャージにTシャツといった色気のない格好で家を飛び出した。


今、11時だし、今から頑張れば今日で3つぐらい終わるかも。



ファイルの中にある課題は、全部で8個。

現代文、古典、数学、生物、日本史、政治経済、英語、読書感想文の8教科。


一日に3教科終わらせていけば、きっと終わる。


苦手教科の数学と英語は、最終日にしよう。

今日は比較的得意な国語系と歴史やろう。


……でもやっぱり、苦手なの先にやってた方がいいかなぁ。




そんな風に悩んでいるうちに、図書館に着いた。



ウィーンと、自動ドアが開き、空調の効いた涼しい空気が頬を撫でる。


そして、図書館特有の本の香りに体が緊張した。


「図書館って、苦手なんだよね…」



鉛筆の音やページをめくる音だけが響く図書館、なんだか背筋がピンとなって、変に緊張してしまう。



開いている席を探しながら歩くと、窓際で奥の方の席が開いていた。

やっぱり、夏休みも終盤だけあって、小学生や中学生、学生の姿が多い。


机に鞄を置いて席に着いた。


「えーと、簡単に終わりそうな読書感想文からしようかな」


と独り言を小さく呟くと、席を離れて、感想文が書きやすそうな本を探すことにした。


分厚くなくて、文字が適度に大きくて、絵があって…。


これじゃあ絵本になっちゃうか。

私一応高校生だしなぁ。


小説の棚をあ行から順に見て行く。


≪そして、生きる≫


さ行の棚のところに、白い背表紙に銀色の文字で書かれた本を発見した。


装丁が綺麗。


陽依は少し高い所にあるその本を取ろうと、思いっきり手を伸ばした。






むぎゅ。






あれ?この感触……本じゃない。