「ジュディ、お前なぁ、せっかくのヨーヨーがすくえなかったやないか!」










先輩…いまなんて。







「ヨーヨーってなにデスカ?食べ物?」


「食べ物なわけないやろ?風船だよちっちゃい」



私をおきざりにして、先輩とジュディは、楽しく話している。


さっき、先輩がジュディのこと、“松田さん”じゃなくて“ジュディ”って呼び捨てにしたとき、なんだか胸がキュッってなった。


どうして?


なんでこんなに苦しくなるんだろう。



「陽依、もう一回やるから!見てて」


先輩は、またしゃがみこんでおじさんから釣り針をもらう。


「なんて可愛いヨーヨーね。それ取れたら私にくれるのネ!うれしい!」

「なに勝手に言ってんねん」


私は、しゃがむ2人のとなりに立って、ただその様子を見ていた。


“私が先輩といっしょにヨーヨーすくいするつもりだったのに…”



「ほら!取れたで!見てたか陽依!」


取れたてホヤホヤのヨーヨーを私に見せる先輩。

そのヨーヨーを私に渡そうと、先輩はヨーヨーを私に近づけた。


「ありがとう!うれしいデス!」


けれど、そのヨーヨーは、ジュディが先輩の手から無理矢理もぎとって中指に輪ゴムを通して、遊び始めた。


「そのヨーヨーはなぁ!」


先輩はそのヨーヨーを取り返そうと、ジュディの手をつかんだ。

ジュディは楽しそうにその手を握り返して笑っている。

とても幸せそうに。

なんだか、私邪魔ものかな?


右手にもったままのヨーヨーの釣り針が、むなしく風に揺れていた。