藤井先輩と私。

親父が病院に着いたのは、母さんが亡くなってから数時間後。

霊安室で、泣きつかれた俺達のところに、あのピシッときめたスーツ姿で現れた。



「……っ!千鶴!」



母さんの名前を呼びながら、冷たくなった体に触れる親父。




「どうして、こんなことに」













親父のこの台詞に、俺は…無性に腹が立った。


今まで抑えてきた怒りが込み上げてきた。


当時子供だった俺には、その怒りを言葉にするということができなくて、ただがむしゃらに親父にぶつかった。



「何をする!悠太!」


無言で殴りかかる俺。

子供の力は弱くて、すぐに腕を掴まれる。


「悠太!」


「パパなんか嫌いだ!嫌いだ!嫌いだ!嫌いだ!」


俺は、何度もそう言うと、霊安室の扉を乱暴に開いて外へ走った。
















「あの日から、俺は、親父が嫌いで仕方がない。母さんを、あんなに親父の事を愛していた母さんに冷たくしていた親父が嫌で仕方がない。…でも、ガキの俺は、一人で生きていけない。だから、義務教育を終えるまでは親父に従おうって決めた。義務教育を終えたら、もうそこからは自分の進みたい道に進める。だから俺は、引っ越し先の大阪を出てこっちにきたんだ。夢を叶えるため。自由になるために」


















藤井side-end-