ふわふわ…。
誰かが、俺の頭をなでている。
ゆっくりと瞼を開くと、もっとはっきり、自分が撫でられていると自覚した。
ばっと起き上がると、そこには、数日ぶりの母の笑顔があった。
「おはよう。悠太」
親父の声は、数日聞かないでいると、本物かどうか分からなくなるのに、母さんの声はすぐに分かる。
思わず「ママ!」と叫びながら母さんに抱きついた。
「こら、悠太。ママ苦しいでしょうが」
祖母に言われて、すぐに母さんから離れた。
「いいのよ。大丈夫。ほらおいで悠太。心配かけちゃったね」
そう言って両手を大きく広げる母さんに、今度はゆっくり抱きついた。
母さんが笑ってる。
母さんが抱きしめてくれる。
母さんが俺の名前を呼ぶ。
嬉しかった。
「悠太が病院に運んでくれたんだって?杏奈の世話も、おばあちゃんも呼んでくれて…悠太ありがとう」
愛おしそうに俺を見つめる母親。
「あのねっ!ぼくね!」
いままでの事を話そうと口を開いた瞬間。
ガラララララッ
と、スライド式の病室の扉が開いた。
振りかえると、そこにはピシッとスーツを着込んだ親父が立っていた。
「なんだ、元気そうじゃないか」

