ピッピッピッピッピッ
たくさんの管。
病室に響く電子音。
白い鉄パイプのベットに横たわる母。
母さんが、倒れてから1週間。
俺はほとんど寝ずに、母さんのそばにいた。
母さんは、あの日からずっと目覚めない。
母さんは、あの日からどんどん痩せていった。
入院手続きとかいろいろな世話をしてくれたのは、母方の祖母だった。
あのあと、必死で救急車を呼んだ俺は、電話帳を開いて一番上に乗っている祖母へ電話した。
九州に住んでいた祖母は、すぐに飛行機で飛んできて、「悠太よぉ頑張ったねぇ」と抱きしめてくれた。
杏奈は、母さんがいなくなってずっとぐずっていたけれど、祖母が来てくれたおかげで落ち着いた。
「……ママは、いつおきるかな?」
自分と反対側のベットのそばに座る祖母に問いかける。
「悠太が一生懸命祈ったら、ママは絶対に目覚めてくれる。悠太、全然寝てないやろ?今日は眠らんと、疲れてお祈りできんなるから」
優しく微笑む祖母。
俺は、小さくうなずくと、母さんが横たわるベットに顔を伏せて瞼を閉じた。
俺はその日、夢を見た。
一週間前の夢。
親父の車を追いかける夢。
どうして、親父は連絡一つくれないんだろう。
あれから一週間。
親父の連絡先を知っているのは母さんだけだったから、祖母も俺も親父に知らせる事が出来なかった。
でも、家の机の上に病院の連絡先を書いた紙を置いていたから、家に帰っていれば、ここに来るはず。
来ないと言う事は、あれから一週間家に帰っていないと言う事。
……親父って、何で母さんと結婚したのだろうか。
分からない。
そう考えると、頭の中が真っ暗闇になった。
そして、とても悲しい気持ちになった。

