さっさと玄関を出て行こうとする親父を追いかけて、母さんは小走りに玄関へ走った。


茫然とその様子を見つめる俺。


親父と母さんが出て行った扉をなすすべなく見つめていると、


ガタン。



というドアのしまる音と、バタンッ!と何かが床に落ちる音が聞こえてきた。


「ママ?」


嫌な予感がして、リビングから玄関につながる扉を開ける。



「ママ!」



目を疑った。


母さんが、うつぶせで苦しい顔をして倒れていた。



「ママ!…ママ!」


ゆさゆさと母さんの体を揺するけれど、母さんの瞼は閉じたまま。


静かすぎる玄関。


ブロロロロロッ……



家の車庫から、親父の車が出て行く音が聞こえる。


「パパ!ママが!ママがぁ!」

俺は急いで玄関を開けると、親父の車が走っていったであろう道を駆け抜けた。

でも、所詮子供の足。

追い付けるわけがない。









「…パパ………」



















俺が初めて絶望を知った日。