「楠木さん?」

上品な笑顔の楠木さん。
近づいて声をかけると、無言のままの楠木さんは人差し指をちょいちょいと曲げて私の顔をもっと近づけるように合図した。

なんだろう。

顔を楠木さんに近づける。




グイッ!




近づけた瞬間、私の制服のリボンを引き寄せられた。

私の顔は楠木さんの耳元で止まり、私の耳元に楠木さんの口がある。

どえぇぇえ!?

なにこのポーズ。

目を楠木さんの方へ移動させると、どす黒いオーラが見えた。

いや、見えた気がした。


さっきまでの笑顔の楠木さんが綺麗な花束のようなキラキラしたピンク色のオーラを放ってたとすると、今の楠木さんは、地獄の亡者のオーラ。


もしかして…楠木さんて……二重人格?

 

「く…楠木…さん?」


リボンを力強く引っ張られているせいで、首が締まって息がしづらい…。



「…………せ。オラ」


ん?

今なんか聞こえた気がする。

それも楠木さんの方から。


「……顔かせ」