「陽依!」
ぼーっと夏休みのことを考えていると、そばにいたユカが私の袖を引っ張った。
「何?」
ユカは「アレ」と指をさす。
その先には、きらびやかな笑顔を浮かべた、楠木さんが上品な出で立ちでこちらを見てる。
私と目が合うと、楠木さんは私に頭を下げておいでおいでをしてる。
呼んでる。
「陽依、呼んでるみたいよ。行ってきたら?」
「えっ…でも」
「私、貴光と図書館だから、もう帰るし!じゃ、暇だったらメールするわ」
と、戸惑う私をよそに、ユカは委員長を連れて消えてしまった。
「友情より恋を選ぶのね、ユカ様」
とりあえず、私は楠木さんのもとへ歩き始める。
一体何の用なんだろう。
今日楠木さんに会うのは2度目。
一度目は今日の朝。
HRが始まる前に楠木さんをさがして、昨日の結果を伝えに行ったとき。
楠木さんのクラスに行くと、すぐに楠木さんは私に気付いて屋上へ行った。
「それで…一体どうでしたの?」
震える声で聞いてくる楠木さん。
「一緒にいた女性は、藤井先輩の妹さんでした」
私がそう答えると、「……へ?」と楠木さんらしくない間の抜けた声が返ってきた。
そりゃそうだよね。私だって驚いたもん。

