藤井先輩と私。



「くっ…楠木さん!」


私が呼ぶと、ギロッと目をこちらに向けた。

えっ…?

楠木さんってこんな目が鋭かったっけ?


ていうかこの人、本当に楠木さん?

よし!もう一度呼んでみよう。


「楠木さん?」


もう一度読んでみると、今まで楠木さんについていた悪霊が祓われたかのように、どす黒いオーラが消えた。


「あら?橋宮さんじゃなくって?私になにかようかしら?」


あ、いつもの楠木さんだ。


「あの~女の子たちがすごく暗いんですけどなにかあったんですか?」


「橋宮さん。聞いていないの?」


「なにをですか?」


「私の情報網も抜け穴があったようね」

そうつぶやくと、楠木さんは私を屋上へ連れて行った。


「この話は、もうあんまり女の子たちに聞かれたくないの。ファンクラブの子が涙を流す姿は…もう見たくないわ」


楠木さんはそう言って、少し涙ぐんでいるようだった。

「私は藤井ファンクラブ代表取締役会長として、ファンクラブ全員のメールアドレスの管理、藤井先輩のあらゆる情報を流してきたの」

へぇ…

楠木さんの携帯のメモリ数はすごいんだろうなぁ。


「私が秘密裏に結成させた情報収集組織から昼休みに情報が入ったの」


秘密裏に結成させた情報収集組織!?

藤井ファンクラブってそんな組織があるの?

なんかなにもかもがファンクラブの域越えてるような…。

 
「情報って?」

「藤井先輩が一人暮らししてるってのは知ってるわよね」


一人暮らししてるんだ。

知らなかった。

「一人暮らしのはずなのに、昨日藤井先輩がマンションに女の子と一緒に入って行ったの」


女の子って…もしかして“アンナ”?