―――大通りのベンチ




引き寄せられた体。


自然と顔も引き寄せられた方へ向く。



視界いっぱいに梶瀬君の顔がある。






近づく顔。


近づく瞳。


近づく唇。



梶瀬君の前髪がわたしのおでこに触れる。



怖い。


いつもと違う梶瀬君がそこにいて、私の知らない表情の梶瀬君がいて。



真剣な眼差しが怖い。



私…いやだ。



キス………したくない。


したくないよ。



嫌…



一瞬よぎる先輩の顔。




嫌…




私のくちと梶瀬君のくちがくっつきそうになった瞬間。









「いやあぁっ!」


と、思いきり梶瀬君を突き飛ばしていた。


突き飛ばされた梶瀬君は、ベンチから落ちて、地面に座ってる。



私ひどいことっ…



黙ったまま、顔を上げない梶瀬君。



「ご…ごめんなさい…私」


私はいつのまにか涙を流していて、突然揺れた視界に驚いて、それが涙のせいと分かるのに少し時間がかかった。