藤井先輩と私。

「ユカ!」


手を振って掛けてくるユカの後ろには、ポケットに手を入れて堂々と歩く梶瀬君の姿があった。


「橋宮、待った?」


梶瀬君は、私の目の前に来てそう言う。


「なんやコラ。そのセリフ聞き捨てならへんなぁ…彼氏づらしないでくれますかー」


「ハッ。朝から暑苦しいな」



藤井先輩と梶瀬君は相変わらず犬猿の仲。


「陽依!ちょっとこっち」


ユカに手を引っ張られる。


「何ユカ?」


「今日のこと忘れてないわよね?」


今日のこと………ん?

なんだっけ?


「その顔は忘れてるわね」



「あ!お断りするんだった!」

「私がちゃんと段取ってあげるから、ちゃんと言うのよ。…なんていうのか分かってる?」


「うん。『梶瀬君。ごめんなさい。お付き合いできません』」

「よく言えました。しくじったら…」

すごい顔ですごまれて私の顔から血の気が引いた。

「分かってる!ちゃんと言いますユカ様!!」



その言葉を聞いたユカは安心して、2人の元へ戻った。