「まだ、時間あるなぁジュースでも飲むか?」
腕時計を見ながら藤井先輩は尋ねた。
「のどは渇いてないので大丈夫です」
「そーか」
夏の日差しを浴びて温かくなった風が吹く。
先輩と私は、2人静かに青く澄み渡った空を見上げた。
「空、青いなぁ」
「そうですね」
長く沈黙が続くけれど、苦痛ではなかった。
のほほんと時が過ぎる。
「陽依は進学するんか?」
「たぶん…進学しますね。入学したてで夢とかなにもないので、とりあえず今のところは進学です」
スイーツに囲まれて過ごしたいって気持ちはあるけど、パティシエになりたいかって聞かれたらそうでもない。
といあえずは今は勉強しなくちゃだけど、苦手な教科多すぎて…。
そうだ、先輩は何になりたいんだろう。
そういえば、この前ホームセンターで雨宿りしたとき、インテリアデザイナーになりたいって言ってたっけ。
「先輩は、インテリアデザイナーになるんでしたよね?」
「そおや、誰が何と言おうとなったる!絶対」
「先輩なら大丈夫ですよ。なれます!」
私がそう言うと、先輩は眉毛をハの字に曲げて笑った。
ホームセンターで見たときと同じ悲しそうな笑顔。
どうして先輩はそんな顔をするの?
「先輩…?」
勇気を出して聞いてみようとしたとき、
「ひ~よ~り~」
ユカの声が耳に届いた。

