先輩は私の方を向いた。
「今、俺の名前呼んだ?…いやあれは夢や…絶対」
「いえ、なかなか先輩が起きないので…呼びました。すいません」
ほんと、申し訳ないです。
先輩の名前を、それの下の名前を呼び捨てで呼んでしまうなんて。
「ほんまか!?俺の名前呼んだんか?」
先輩はそういうと、ガッツポーズをした。
「なにがそんなにうれしいんですか?」
「い、いや別に…なんとなくや、なんとなく」
時計を見ると、9時40分。
あと20分で集合時間。
でも先輩、私と同じぐらいの時間にここに来てたみたいだけど。
「先輩、集合時間10時ですよ?どうして…」
「あぁ、なんか楽しみすぎて早く来てしもた。陽依は?」
「早起きしちゃって暇だったので早く来たんです」
「そぉか。ていうか…大丈夫か?」
先輩は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「もう大丈夫です!先輩助けて下さってありがとうございました」
いくら怖かったからって、先輩に抱きつくなんて私どうかしてた。
先輩、迷惑だったかな…。
「ほんならよかった。しかし、あのピアス野郎。次陽依の前に現れたら、しばく!親はどういうしつけしてんねん!親からもろた体に傷つけるようなことしたらアカンわ」
熱く語る先輩を見ていたら、なんだかとても心が温かくなって、なんだかとてもほっとした。

