ただいま、橋宮陽依は倒れた先輩を一生懸命、近くの柔らかい芝生の方に引っ張って、ハンカチで仰いでます。
真っ赤になって目を回している先輩。
これは救急車を呼ぶべきかな。
頭を触ってみると、熱はないみたい。
熱中症ってわけじゃないんだ。
「先輩?大丈夫ですか?先輩」
「…ん゛…うぅ…」
「藤井先輩!」
もう一度名前を呼ぶと…
「……悠太て…呼んでや…」
目を閉じたまま苦しそうに先輩が呟く。
“悠太”って先輩の下の名前?
切なそうな顔でつぶやく先輩に少しだけドキッとした。
「…悠太て……」
これは呼ぶべきでしょうか?
私は後輩なわけでして、年下なわけでして、それに私に呼んでって言ってるわけじゃないし。
先輩の好きな人が夢に出てきてるのかも。
それで、寝言で…
「ひ…より……」

