藤井先輩と私。

「なにしてんねん、おっさん」



声とともに、つかまれていた腕が解放される。



「おっさん?てめぇ誰だ!」

金髪にやにやピアス男は、いつのまにか地面に尻もちをついていて、こちらを見上げてどなってる。



私の前には、オレンジ色の髪の藤井先輩が私を守るようにして立っていた。



「俺は、えっえと…その、陽依のかか…彼氏や!俺のおっ女に手だすなっ!どっかいけ」

どくとくな関西弁が怖いのか、金髪にやにやピアス男は「覚えてろよ!」とこけそうになりながら、走り去って行った。



「大丈夫か?陽依!」


先輩…。

先輩の顔を見ると、なんだがとても安心して、こらえていた涙があふれてきた。


「せんぱぁい…怖かったです…ひっく…ふえぇ…」


一人で立っているのが辛くて、先輩の胸に飛び込む。

少しだけ、こうさせてください。


「陽依…大丈夫や。俺がいるからな」

先輩はそっと、私の頭を撫でてくれた。


「ありがとうございます。先輩」




「………」











「先輩?」


反応がないので、見上げると、先輩はまたあさっての方向を向いて固まっていた。

そっと離れて、固まった先輩をつつく。

すると、バターンと倒れてしまった。

「せっ!先輩!藤井先輩!!」