玄関のドアが開く音と共に
聞こえる声。

「お兄ちゃん、イチヤ
 おかえり・・・あれっ
 ねえ、イチヤは?
 
 今日は
 一緒じゃなかったの?」

長い髪を後ろで一つに結び
エプロンを付けた花夜子。

「ああ・・・
 アニキは帰る途中
 ダチに会って
 そのまま出掛けた」

「ふうん、そうなんだ
 
 せっかく
 クッキー焼いたのに
 つまんないの」

「俺には無いの?
 
 それ」

「あるよ

 たくさん作ったの
 一緒に食べよう」

「ああ、着替えてくるよ」