痺れる兄貴の瞳を持つ綺麗で
切ない花夜子に、俺は見惚れ

気づくと、この腕に
花夜子を抱きしめていた。

「お兄ちゃん?」

「黙ってろ
 
 俺が隠してやるから」

部屋のずっと向こうから
聞こえるのは、母の話し声。

花夜子は俺の胸で、コクンと
頷いた。

「ありがとう」

抱きしめた花夜子から香る
香りはきつく、無理に大人に
なろうと必死に生き急いで
いるようでとても切ない。

「カヤコ、俺の前では
 大人ぶるな

 家に戻ったら、どうだ?
 
 俺もアニキも、もうずっと
 住んで居ない

 おまえが出て行く理由
 なんてない

 水商売なんてやめて
 なあ、そうしろよ」