玄関先、花夜子はハンカチで
濡れた顔を拭う。

「なあ、カヤコ?

 お前とアニキ
 いったい何があった?

 お前
 
 気持ち、伝えたのか?」

「濡れてるよ」

花夜子は、そのハンカチで俺
の頬を拭きながら悲しい顔を
した。

「言わなくても知ってるよ
 
 知ってて、知らないふり
 するの
 
 イチヤ、得意なのよ」

花夜子の髪から垂れた雨水が
額を掠め瞼に到達する頃には
花夜子の瞳いっぱいに溜め涙
は溢れ、雨水を含み頬を伝う。

「聞いてさえ

 くれない・・・」