桃染蝶

貴方は雨に濡れながら
自分が立つ足場をただ
見つめている。

真紅のシャツが雨水を含み
貴方の体、背中にべったり
と纏わり付く。

兄貴・・・

声をかける事を戸惑う、正二。

天を見上げ、顔に雨を受けなが
ら、真っ暗な空に向けて高く手
を掲げる兄の姿。

何かを掴むように貴方はその手
を握り締めた。

「そこで見てろよ」

この俺を・・・

「アニキ・・・」

貴方は、その手に何を掴む。

一夜の傍に駆け寄る正二。