桃染蝶

そう、私の病気は末期ガン。

延命治療を一切望まない私
の鼓動は、もうすぐ止まる。

もうすぐ、この世から
私は消えてなくなる。


退院した私は、病気の事を隠し
一夜と沙織さんの家で暮らす。

産後の体調が思ったよりも
回復しない風を装い、病気の事
は決して一夜には悟られない
ように過ごした。

キッチンで、庵の為に粉ミルク
を作る沙織は小声で言う。

「ミルクでいいのかしら?
 母乳じゃなくて・・・」

「大丈夫だ
 
 粉ミルクでも子供は
 立派に育つ

 サオリ、カヤには今の事
 言うなよ
 
 気にするから・・・」