桃染蝶

「ありがとう

 これから、先生と大切な話が
 あるから少しだけ待ってて」

「ああ」

病室で、待ってる二人。

「イオリくん 
 まだなのかしら?」

「そんなに焦らなくても
 連れて帰ったら嫌でも
 家にいるさ」

「早く抱っこさせて
 ほしいなぁ」

花夜子の出産を思った以上に
喜ぶ事のできる沙織がそこに
いた。

自分の事のように喜ぶ、沙織
を見つめて一夜はほっとする。

「何、そんなに嬉しいの?
 
 ギャーギャー

 うるさいぞ」

「うるさくてもいいの
 
 赤ちゃんは、泣くのが
 仕事なんだよ
 イチヤ、知らないの?
 
 まだかなぁ」