桃染蝶

「イオリ、ママの子供に
 生まれて来てくれて
 ありがとう」
 
その喜びを胸に入院を終え
無事に退院の日を向かえる
私を迎えに来てくれたのは
一夜と沙織さんだった。

倒れた日、鞄の中、私が
持っていたアドレス帳から
一夜の連絡先を知った病院は
彼に連絡を入れてくれていた。

私は結局、また二人に迷惑を
かけ、お世話になる。

今度は赤ちゃん、庵と共に。

「イチヤに、サオリさん
 今日はありがとう
 
 入院中は何から何まで
 ごめんなさい

 それに、また
 お世話になるだなんて・・」

退院の荷物を一緒にまとめて
くれる沙織さん。

「気にしないで、水臭いわよ
 ねえ、イチヤ」

「ああ、気にするな」