桃染蝶

「ごめん、ごめんな」

やっぱり・・・

彼女は、ショウの子供を
流産したのね。

この場所に、私はいるべき
じゃない。

こんな私に優しくしてくれる
沙織さん

そんな彼女の心が悲しみ色に
染まっていくのは、私のせい。

忘れられるわけがないけど
忘れなきゃ辛すぎて生きては
いけない。

子供を身篭った事を知った時点
で、既に女は母なのだ。

悲しみを比較しちゃいけない
けど、子供を失くした母親の
悲しみは耐えがたい苦しみ。

今の彼女には束の間
忘れる事が必要・・・

妊婦の私の姿が傍にある限り
彼女は過去に、何度と囚われ
前を見れないだろう。