主を失くした、部屋

電気も点けることなく正二は
黙ったまま、黒い革張りの
アームチェアを見つめてる。

憧れ続けた、その場所に
座るのは、誰?

それは、俺。

俺は、アンタになる。

跡目を継ぐ事にしか全く興味の
無い正二は消えた花夜子の事
など考えてる余裕はなかった。

いやっ、他所事を考えていては
初馬には勝つ事はできない。

空を見つめ、正二は想う。


カヤコ・・・

今だけ、おまえを忘れること
赦してくれ。

決着がつけば必ずおまえを
探し出し、迎えに行ってやる。

だから、少しだけ・・・

今だけ、一人にさせるけど
ごめんな。