会澤と暮らしたあの部屋を
飛び出して新しい部屋を借り
住んでいた私の荷物なんて

たったこれだけ・・・

小さな鞄がひとつ。

それは、愛する貴方と過ごした
楽しかった時間の少なさを
私に感じさせる。

鞄を持つ、私。

重たい・・・

重たいのは、真実の愛が
たくさん、詰まっているから。

何も言わずにいなくなる私を
どうか探さないでください。

どうか嘆かないでください。

どうか悲しまないで・・・

私は、左手の薬指に光る
指輪を見つめた。