桃染蝶

カップに触れた手は温かい。

「その、ひとつ
 聞いてもいいですか?

 イチヤは、私の事
 貴女に何て話してるの?」

「いっちゃんからは、妹さん
 だと聞いただけで詳しい事
 は何も・・・」

何だぁ、それだけ・・・

「ただ、寝言でカヤと
 貴女の名前を呼ぶ事が
 あって
  
 正直言うと、今の今まで
 私、いっちゃんのこと 
 疑ってたんです

 妹だなんて嘘ついて本当は
 女の人じゃないかなって
 ・・・」

『彼女、アニキの女関係に
 シビアになってるんだ』

二人の喧嘩の原因は、この
わたしなの?

「そんなに私の名前を・・・」

「ええ」

呼ばることのない名前。