桃染蝶

そう言って明るく微笑む彼女
の姿を見つめた一夜は、歩み
出し、この場所を去った。

彼女の手が、小刻みに震えて
いる事に貴方は気づかない。

一夜の姿が見えなくなると彼女
は、今度は辛い表情を浮かべる

明るい貴女も、暗い貴女も
どちらもメイさん・・・

私は繋がれたその手を振り解く
事ができない。

「散らかっていますけど
 どうぞ」

「お邪魔します」

私は待たせてあったタクシーを
返し、今こうして彼女と一夜の
住む、この部屋に居る。

どうせ、家に帰ったところで
私も二人の事が気になって
眠れない。