桃染蝶

「行ってくる」

「いってらっしゃい」

私の脇を何も言わずに
さっと通り過ぎる一夜。

「私も、これで失礼します」

一夜の後を追いかけようとした
私の手を掴んだのは彼女。

放してよ

私に触らないで・・・

私に聞こえる声。

「カヤさん

 あの、よかったら一緒に
 居てくれませんか?」

その言葉に驚いているのは
私だけじゃない。

階段へ差し掛かった一夜の
足が止まる。

「お話しません?」