桃染蝶

「おにい(ちゃん)・・・」

「また、店行くわ
 
 じゃあな

 運転手さん
 とりあえず出して」

動き出すタクシー。

リアウインドウから花夜子は
歩道に立ち手をふる正二の姿
を見つめる。

ずっと見つめる。

正二の肩を抱く男達。

「お客さん、どちらまで?」

「・・・まで
 急いでください」

こんな夜更けに、タクシーが
向かう場所。

『・・・この事はアニキ
 には話すな
 
 おまえは、何も見てない
 ・・・』