桃染蝶

花夜子の頭を撫でる、正二は
優しく微笑む。

一台のタクシーが二人の前に
停車した。

「ねえ
 このまま一緒に帰ろうよ」
 
「駄目だ」

「ねえ、お願い・・・」

見るからに、柄の悪い連中が
正二の事を待っている。

「ほらっ、カヤコ
 乗った乗った」

無理やり、車に乗せようとする
正二の腕を掴む花夜子。

「ねえ
 だいじょうぶなの?」

「ああ
 見たところ話の分る連中だ
 
 それに奴等が用があるのは
 俺ではなくアニキ・・・

 アニキを呼び出せる格好の餌
 である俺をそう簡単には
 遣らないだろう
 
 まっ、親を売る様な真似は
 しねえけどな」