桃染蝶

「ああ、女には手は出さない」

「ちょっと、待ってろ」

逃がすかとばかりに正二の肩
を強く掴む男。

その手を払いのける、正二。

「俺は逃げない」

「お(にいちゃん)・・・」

花夜子の唇を掌で押さえた
正二は、男達から距離を取り
車道の傍、高く手を掲げた。

そして、花夜子の耳元で囁く。

「何も言うな
 
 おまえが妹だと分れば
 危険が及ぶ

 奴等を見ることなく黙った
 まま、ここを立ち去れ
 
 それから、この事はアニキ
 には話すな

 おまえは、何も見てない
 わかったな?」