そりゃもちろんそうだが、気持ちは分かる。

神にも天にもなんにも縋りたくもなるってものだ。


信じたくないだけであって、信じていないわけじゃない。

受け入れたくないだけで、受け入れてないわけじゃない。


ただの、最後の悪あがきさ…。

そのくらい、したっていいだろうぜ。なあ、楓…。

俺ァよ、真裕に散々お前と似てる似てると言われたが。

似てるどころの騒ぎじゃねェよ。

俺とお前は正反対にすら位置する。

と、いうよりは……俺が、おめェの足元すら見える位置にいねェのさ。

どんなに雰囲気が似ていても。

俺は結局、何一つとしてお前の足元にも及ばねェ。

演奏から始まって…男としても、人間としても。

そりゃ確かに、聞いた話じゃ両想いから付き合うまでに半年かかってるらしいし、婚約しても結婚しても手が出せねェヘタレだが。

だがお前は、本当に男前だ。

内面の男気が容姿に表れてるんじゃねェかってほどにな…。

人間としての潔さも、器のデカさも。

本当に格好よくて、俺ァおめェが好きだったさ。

あれだけ真裕だけを愛することが出来て…同じように真裕も楓を愛した。

まさに理想じゃねェかよ。

なんでおめェ……あいつを置いてったのよ。

いいのかよ、ええ?

おめェが目ー離してっと、真裕は可愛いから他の男にとられちまうぞ。

いくらでも、真裕を狙う男はいる。

…いいのかよ。

クールなように見えて、独占欲の強い男が。

あっさり……手放しちまっていいのかよ…。





『…ン……シュンっ?』


『ん…ああ、なんだ?』


『なんだじゃないわよ。どうしたの?』