どこのなんだろう。
この季節にこんな甘い桃があるなんて。
…てかぶっちゃけあのかご、季節感ゼロね。
春夏秋冬関係なしに色んな果物が乗っかってる。
どこで買ったんだろう…。
「ありがとりんりん」
「いいわよそんなの」
さらっと返しながら、果汁の垂れそうなほど熟した桃をまたぱくり。
あたしもそれにならってまたぱくり。
そして次にりんりんが……と、お皿の上の桃がなくなるまで、無言のままあたし達は食べ続けた。
「ん❤甘かったわねー」
満足そうな顔でそう言ったりんりんに頷いて見せるあたし。
ごはんがどうしても食べられないから、朝から晩まで食べたいと思ったらフルーツを切ってもらっている。
病院の先生は、何も食べないよりはマシだって苦笑いをしてた。
「ねえまお、退院いつ頃になるかしらね?」
「…分かんない」
「退院したらちょっと出てみない? 帽子でもかぶってたらいいわ。そんで琥珀と梨音と散歩に行くの!」
「琥珀と梨音?」
そういえば……あの子達、ウィーンで坂本さんに預けたままだ。
元気かな…梨音は寂しがってないかな。
琥珀も、ずっとあたしと離れてるとごはん食べなくなるって坂本さん言ってた。
大丈夫かな…。
急に心配になってきた。
これまで気にする余裕がなかったから…。
ごめんね琥珀、梨音…。

