「…身だしなみを整えるのは、人として当然のことだと思うぞ」


「うっさいわ!Σ」


…まあいい。

今はそれどころでもない。

ぶっちゃけ修平が人であろうとなんであろうと、僕には関係ないし興味もないしね。


「そらお前言い過ぎとちゃうん!?」


なあなあとしつこい修平に足を引っ掛けて転ばせておいて、ホテルの前でタクシーをつかまえる。


「轟くん!」


「君は…」


「花梨ちゃんの友達です。病院に行くの…?」


「ああ。悪いけど急ぐんだ」


僕らが毎日“藤峰真裕”の病院に通っていることは、もはや全員が知っている。

しかしそれに対してはそこまで不信感を持たれずに済んだ。

だって、藤峰真裕は親友の楓くんの奥さんっていう解釈をされてるからね。


女の子と話をしている数秒の間に修平も追いついてきて、足早にタクシーに乗り込んだ。


「お前な、転ばすんはおかしいやろ」


「どこが」


「どこがとかゆうとる時点で終わりやでお前人として!」


「お前に言われたくないよ」


「いーやっ。お前は悪魔!」


「ふん…それはありがとう。最高の褒め言葉だ」


「やっっっぱり悪魔やんけ!」


ギャースカとうるさい修平に眉をしかめているうちに、やがて車は病院の前で止まる。