――真裕サイド――


「…だから、今向かってるのはイギリスのN病院。そこに、楓くんはいる」


いる…あの人が、いる?

生きて……その場所にいるっていうの…?



ずっと聞きたかった言葉。

夢に見るほど、待ち望んでいた言葉。


それがまさか、今になって聞けると思わなくて。

信じられない思いに駆られた。


さっきまでの気分の悪さやイライラなんてどこかへ消えてった。


あたし、今、何を聞いた?

かっくんが生きてる……生きてる…!?


「……うそ」


「嘘じゃない」


「だって…」


「本当だ。間違いないよ今度は」


「でも…」


でも…?

あれ…でも…なんだっけ…?


嬉しい…こと。

喜ぶ…こと。

だけどなんで?


なにかが、あたしをそうさせない。


“生きてるはずがない…”


生きてるはずがない?

なんで?


“だって…あの人は…”


あの人は……なに?