ギャースカ言うおじさんと、どこまでも冷たいまおちゃん。

一見いつも通りだけど、彼女の対応だけが少しばかり違った。


「まおパパもうええやん。そろそろ言ってぇな」


「お、おお…。だからお前の愛犬達と共に来るそうだよと」


「琥珀達?」


ようやく出た一言に、ここ最近では初めてと言っていいほどに目を輝かせる彼女。

ようやく、やっぱり生きている、と思えた気分だった。


これまで死んだような目をしてて。

自分が今目の前にしてるのは、本当にあのまおちゃんなんだろうかと。

本当は…彼女も楓と一緒に行ってしまってて、これは幻覚かなんかなんじゃないかと。

そう思ってしまうほどだった。


「いつ頃かは分からんが、本当に近いうちだ。さかもっちゃんの正確さは知ってるだろ?」


「…会いたいな、早く」


「私の話、もはや無視!?」


「よかったわねまお」


『梨音達? 久しぶりね!』


嬉しそうなのはメイリーも花梨も一緒で。

少しだけ、病室内の空気が和んだ気がした。



それから三十分ほど経った後。

お見舞いに来ていた僕らは全員それぞれホテルへと帰った。

まおちゃんはずいぶん具合がいいようだから、琥珀や梨音達が到着する頃には退院できているかもしれないそう。

あとは、通院しながら記憶を戻していくそうだ。

だって、それ次第ですべての局面は変わるのだから。

いい方向に向かうか、それともさらに…。


…いや。

今以上に悪い状況なんて、きっとないだろう…。