「渚君・・・」

「・・・母さんがこのまま…真実を話してくれなかったら、父さんは俺に黙って、あの世に逝っていたかもしれない」

彼の悲痛な叫ぶが夜の闇に消えていく。

「酷い話だ」

彼の瞳には溢れんばかりの涙。
やがて、瞳にせき止められていた涙は頬を伝った。


「父さんは鷹栖と同じコトをしようとした・・・」


お父さんは黙って、私を身ごもったお母さんを連れて、この屋敷を出て行った。

もう16年前の話だが、未だに渚君は念に持っていた。
自分の世話を放棄して、出て行ったお父さんを恨んでいた。


でも、お父さんは一度たりとも、渚君を忘れていない。

だから、私に那岐紗と言う名前を付けて、大切に育ててくれた。