ありえない高校生マリッジ

「幾つだ?」

「6歳…今年小学校1年生になったばかりだ・・・」

「6歳か…可愛い盛りだな」

でも、正直俺は自分の健康に自信がなかった。

「そう思っていても、この先生きていける自信がない・・・」

「渚・・・」

「陽依の為に生きようと思っていても…生きる気力が湧かないんだ」

それはきっと那岐を失ったせいだ・・・

ーーーー俺たちは一心同体の存在だったから。

「寂しいのか?」

「そうだな・・・」

だから、この寂しさを紛らす為に酒に溺れて、具合を悪くした。


「・・・私はお前に生きる力を与える力はない。
でも・・・」

「!?」


「仮にお前が亡くなった場合、私が陽依ちゃんにサポートはしよう。彼女は良き伴侶に巡り会い、結婚するその刹那まで…それならできる」

「それは敦司が亡くなった場合にも、ちゃんと守れるようにしてくれよ・・・」

「そうだな・・・息子の紡に申し送りしておこう。アイツは責任感が強いし、紡に任せておけば、大丈夫だ」

「ありがとう・・・敦司」

「・・・敦司」

「なんだ?」

「伊集院家と氷室家が仲良くなれればいいな・・・」

「渚・・・鍛造叔父さんの目が光る間は無理だったが…これからはこうして会えそうだ」

「俺の頼みを訊いてくれるか?」

「・・・んっ?頼み?」


「何も言わず…俺の作成する契約書にサインにして欲しい・・・」
・・・敦司は暫し考え込んだ。
慎重な敦司だ。内容の分からない契約書にサインしないだろう。
しかし、敦司は・・・

「・・・親友の頼みなら仕方がないな・・・」


敦司は笑い、俺の頼みを承諾した。
「敦司、いいのか?お前の不利な契約かもしれないぞ」

「俺は渚を信じている・・・」
信じているか・・・

―――――伊集院家と氷室家の間の溝が埋まる。
敦司の言葉は
失った30年が戻る瞬間でもあった。
俺にとってもお前はこの世でたった一人の親友だ。
  (完)