「渚君・・・」

渚君は椅子に背を預けて、物思いにふけ込んだ。


「俺の答えはもう決まっている・・・」

「渚君?」

渚君はポツリと呟く。

その声は寂しげで切なそうだった。


「会社がヤバいんだ・・・
俺にすんなりと常務派が社長の椅子を譲ったのには、裏の事情のあったんだ・・・」

「えっ?」

「・・・『帝和銀行』からの融資を受けなければ…会社は倒産する」

「倒産?」

「・・・母さんもあの通り、うつ病にかかって・・・頼れそうにない」

渚君一人に大きな責任が・・・

「・・・伊集院頭取自ら、俺に言ってきた。融資は継続してやるから・・・私の条件を吞めと」

「条件?」

「・・・敦司と絶交しろってさ・・・」

やっぱり私の実の父親はゲスな男だ・・・

クズだ・・・