「まぁ、先は長いですから・・・」

「まあな・・・でも、そう言う平井さんはまだ独身でしょ?」

「はい。前社長にも早く結婚しろと言われましたけど・・・まだ、独身です」

平井さんは今年31歳。
元は父の秘書を務めていた。

「副社長の具合はまだ・・・良くなられないんですか?」

「まぁな」

「・・・社長お一人では心もとないのに・・・」

「大丈夫だ。篝常務たちがフォローしてくれる・・・」

「・・・篝常務を余り・・・過信しない方がよろしいかと思います。社長」

平井さんの声は急に小さくなり、不穏に響く。

「どうして?」

「どうしてって・・・」

平井さんは歯切れが悪くなった。